301 クウラ ハワイの魚の神 (11.王が焼き討ちを命じる)

(前回からの続き)

王に魚を差し出す

その男は王のもとに戻って、その魚を差し出しました(*1)。


すると、王が尋ねました。
「誰が、それをくれたのだ?」

その男は答えました。
「クウラです。」

これぞ復讐のチャンス

その時、彼の頭にこんな思いが浮かびました。
「よーし、復讐のチャンスだ。」

そこで彼は、クウラの言葉を、王に伝えました。
しかし、そのまま同じようにではなく、こう言ったのでした。

「漁師長から、戻って王にこう伝えるように、と言われました。

『あなたの頭は体から切り離され、イムで焼かれるでしょう。
そして、体の肉は細かく切り刻まれ、塩をふって天日干しされるでしょう。』」

王が焼き討ちを命じる

これを聞いた王は、漁師長のクウラに、激しい怒りを覚えました。

そこで王は、目の前のその男に、こう命じました。
「さあ行くんだ。そして、全てのコノヒキ(土地の責任者で人々を指揮する者)と民に、こう言うんだ(N.1)。

『山の中に入れ。今からすぐ、山ほどの薪(たきぎ)を集めろ。
集めた薪は、クウラの家の周りに積み上げろ。

奴と奴の妻、それに子供を、焼き殺してやるんだ。』」

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) コノヒキ(konohiki):
かつてのハワイでは、両側を山に囲まれて海に至る谷が、最も基本的な共同生活区域で、これをアフプアア(ahupua'a)と呼んでいました。区域の最高権力者は首長(aliʻi ʻai ahupuaʻa(ハワイ語),chief(英))で、そのすぐ下にコノヒキ(konohiki(ハワイ語))がいました。
コノヒキは現場の最高責任者で、アフプアアに住む平民(Makaʻāinana)を直接指揮管理しました。その職務範囲は広範で、土地や水の割当て、漁業の管理、納税物品の徴収、共同作業の指示などでした(*2)。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 21. Ku-ula The Fish God of Hawaii, Translated from Moke Manu by M.K. Nakuina, p.215-229.
(*2) L.W.Greene(1993): A Cultural History of Three Traditional Hawaiian Sites on the West Coast of Hawai'i Island, National Park Service, p.41.