305 クウラ ハワイの魚の神 (15.クウラの家が焼かれる)

(前回からの続き)

王の従者がクウラを捕える

それはクウラが彼の息子に、あの重要な指示をした後のことでした(*1)。

トラブルが起こりそうな兆候に続いて、ある日、現実に王の従者がやって来ました。
そして彼らを捕(つか)まえると、両手を背中に回して後ろ手に縛り上げました。

モロカイ島から来たあの悪人も、そこにいました。
彼はカモホアリイの命令が実行されるのを、手助けしに来たのです。

何と言っても、この残酷な命令の発端は、彼がでっち上げた作り話しなのですから。

柱に縛り付けて火を放つ

クウラたち3人は、自分たちの家の中に連れて行かれました。

そして中に入るとすぐに、クウラは棟木(むなぎ)を支える端柱(ポウハナ)に、縛り付けられました(N.1)。
また妻は家の中心柱(カイ・ワエナ)に、さらに少年アイアイは隅柱(ポウ・オ・マヌ)に縛り付けられました(N.1)。


このように3人を縛り付けてしまうと、従者は家の外に出て行きました。
それから出入り口を薪(たきぎ)で塞(ふさ)いで、その薪に火を付けました。

しかしその火が燃え出す前に、クウラたちを縛ったロープは、3人の手から解(ほど)け落ちたのでした。

人々がクウラを哀れむ

男たち、女たち、そして子供たちが燃え上がる家を見つめていました。
彼らは中にいる3人を深く哀れみ、その頬(ほほ)には涙が流れ続けていました。

と言うのは、彼らがクウラと一緒に暮らして来たその間、クウラはいつも親切だったことを思い出したからです。

彼らは、何故(なぜ)この家族が、そしてこの家族の家が、このように燃やされねばならぬのか? を知りませんでした。

やがて火は家全体に燃え広がって行き、立ち上がる炎の数々が、何もかも焼き尽くしていました。
そしてその時、クウラと彼の妻は息子に最後の言葉をかけると、そこから去って行きました。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) 端柱(ポウハナ)(end post(pouhana)), 中心柱(カイ・ワエナ)(middle post(kai waena)), 隅柱(ポウ・オ・マヌ)(corner posts (pou o manu)):
ここでは、ハワイの伝統的な家に見られる代表的な柱3種類が登場し、そのハワイ語名もカッコ内に付記されています。 クウラが縛り付けられた「端柱(ポウハナ)」は、屋根構造の最も重要な部材である「棟木」をその両端で支持する柱です。また、中心柱(カイ・ワエナ)は棟木をその中心で支持する柱、そして、隅柱(ポウ・オ・マヌ)は家の4隅に立つ柱です(*2)(*3)。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 21. Ku-ula The Fish God of Hawaii, Translated from Moke Manu by M.K. Nakuina, p.215-229.
(*2) City and County of Honolulu: Article 12.Indigenous Hawaiian Architecture, Chapter 16.BUILDING CODE, Revised Ordinances of Honolulu 1990("ROH").
(*3) Pukui & Elbert(1986):Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.