306 クウラ ハワイの魚の神 (16.復讐の第1弾)

(前回からの続き)

クウラはどこから家を出た?

クウラと彼の妻は、すぐさまそして静かに、家の外に出ました。
その静かさたるや、あたかも 「死を前にした最後の一呼吸」のようでした。

そのため、 彼らがどこから、どんな風にして、家の外に出て来たのか、誰も知りませんでした。
--- 何人もの人々が、そこに立ってじっと見つめていたのですが。

復讐の第1弾:魚たちを連れ去る

物質的な、人間の姿を取り続けていたのは、ただ1人、アイアイだけでした。

クウラと彼の妻は、ある不思議なパワーにより変身して、海に入りました。
そして彼らは、ハナやその周辺で泳いでいた、あらゆる魚を連れて行きました。

それに加えて、海辺にいたコケムシ、カニ、ザリガニ、また色々な種類の貝類、更には岩肌の海岸にいるオピヒ・コエレさえも、連れて行きました。
こうして、海にいた食べられるものは全て、連れ去られたのでした。


これがクウラの復讐の第1弾で、王と王の命令に従ったハナの人々を狙(ねら)ったものでした。
その結果、彼らは魚不足にひどく悩まされました。

アイアイはほら穴に向かう

クウラと彼の妻が家の外に出た時、あの3つのヒョウタンが、次々と熱で爆発しました。

燃え上がる家をじっと見ていた人々は、誰もが皆こう確信しました。
「きっと、クウラと彼の妻、そして子供の体が破裂したのだ。」

すると今度は、家の屋根を突き抜けて、炎が立ち上がりました。
そして炎の上に黒い雲がかかりました。

雲はやがて向きを変えて、カイウィオペレの丘の前面と向き合いました。

この時、人々には、アイアイが炎の間を通り抜けて、昇って行くのが見えました。
それから彼は、あの雲の上を歩いて、丘に向かったのでした。

こうしてアイアイは、ある小さなほら穴にやって来ました。
そのほら穴は、彼を迎え入れて救ってくれたのでした。

(次回に続く)
[目次へ戻る]

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 21. Ku-ula The Fish God of Hawaii, Translated from Moke Manu by M.K. Nakuina, p.215-229.