310 クウラ ハワイの魚の神 (20.コア・クウラの誕生)

(前回からの続き)

友達の両親も漁に加わっていた

アイアイと友達になった男の子の両親も、この漁(りょう)のグループの中にいました(*1)。
彼らは王の命令に従ったものの、苦労しただけで何も得られませんでした。

アイアイは、毎日ハネオオに下りて行く彼らの姿を見て、どうしたのかと尋ねました。
すると彼の友達は、その一部始終を話してくれました。

友達をほら穴に誘う

そこでアイアイは 「一緒にほら穴においでよ。」 と友達を誘いました。
そこは父の家が燃えた後で、アイアイが一夜を過ごした場所です。

ほら穴に着くとすぐに、彼は魚の神である石、ポハク-ムオネ、を見せてこう言いました。

「僕らはこの石で、魚を呼び寄せる事が出来るんだ。
必死に働くことも無いし、またトラブルの心配も無いんだ。」

魚の神の石を父の池に据える

アイアイが石を手に取ると、2人はレホウラへ下りて行きました。
そして、父が造った池に面してその石を据えながら、彼はこう繰り返しました。

「おー、クウラ、我が父よ。おー、ヒナ、我が母よ。
私はここに、この石をあなたの名、クウラ、において据えます。

これで、あなたの名は世に知れ、かつあなたの息子である私も、世に知れるでしょう。

このクウラ石を守ることは、私の友達に託します。
そして今後は彼と彼の子孫が、この石に関わるあらゆる事を、我々に代わってするでしょう。」

友達に仕事の内容を伝える

こう言い終えると、彼は友達に仕事の内容を説明しました。
またその石について、注意すべきことも全て伝えました。

さらにこの仕事を通して、色々な魚を望み通りに動かす力が授けられること、も話しました。

父の制度をアイアイが初めて実践した

これが、初めて地上に据えられたコア・クウラでした(N.1)。

漁師はこのコア・クウラに、最初に捕れた獲物を奉納しなければなりませんでした。
すなわち、2匹の魚を選んでクウラ石に差し出し、クウラへの供物(くもつ)とするのです。

こうしてアイアイは、父が定めた魚の奉納という制度を、若くして自分の生地で、誰よりも先に実践しました。
  しかし、これは彼の両親のマナ クプアに助けられて初めて、達成出来たものでした(N.2)。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) コア・クウラ(ko’a ku-ula):
「コア・クウラ」はハワイ語で、クウラの神社またはクウラの祭壇、といった意味です。クウラを神として祀(まつ)った小さな神社(ヘイアウ)で、海岸や養魚池の近くに数多く造られました。
(N.2) マナ クプア(mana kupua):
「マナ クプア」はハワイ語で、半神が持っている超自然的な力、を意味します。マナ(mana)は「超自然的な力」、そしてクプア(kupua)は「半神(demigod)」を意味します。なお、このクプアは、植物や動物さらには人間など、様々な姿をとってこの世に現れます。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 21. Ku-ula The Fish God of Hawaii, Translated from Moke Manu by M.K. Nakuina, p.215-229.