318 カリウワア. 半神カマプアアが-- (5.生い茂る樹木たち)

(前回からの続き)

自然を愛する人の小径(こみち)

この滝に通じる小径は、自然探索を愛する人ならば、誰にとっても大変興味深いものです(*1)。

出発点は渓谷の一番奥、我々が馬から降りた所です。
徒歩で山に足を踏み入れると、一歩進むたびに新しく、独特の美しさが目の前に現れます。

豊かに青々と生い茂った新鮮な緑が、地面を覆(って)います。

オヒアが光を遮(さえぎ)る

そして所々(ところどころ)に、美しく光り輝くオヒアの葉が見えます(N.1)。
ここでいうオヒアとは、在来のリンゴの木のことです(学名Eugenia malaccensis)(N.2)。


そのオヒアの葉は、人気(ひとけ)の無いこの地にまで差し込んだ、
ほんの数条の光線さえも、遮ろうとしているかのようです。

竹、ククイ そして断崖

少し先では、優雅な竹が細長い茎を、かなりの高さまで伸ばしています。

そして竹の黒ずんで艶のある葉が、ククイの銀色に輝く葉と混じり合っています。
このククイは英名がキャンドル・ナッツです(学名Aleurites moluccana)(N.3)。


これらの樹木が一緒になって、黒い断崖と印象的なコントラストをなしています。
そして、この黒い断崖はと言えば、樹木の両脇に重々しく崇高にそびえ立っています。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) オヒア(Ohia):
ハワイ語でohiaオヒアと呼ばれる樹木には2種類、 オヒア・アイ(ʻōhiʻa ʻai ) および オヒア・レフア(ʻōhiʻa lehua(=lehua)) があります(*2)。本文の場合は、後続の学名と符合するオヒア・アイを指しています。
(N.2) 在来のリンゴの木(native apple-tree)
原文では "native apple-tree"と記載されていますが、オヒアは 在来種(native)ではなく、ポリネシア人が持ち込んだ カヌー・プラント(canoe plant)の一種です。英名は 「マウンテン・アップル(mountain apple )」です。
なお、オヒアの学名を"Eugenia malaccensis"としていますが、これは "Syzygium malaccense" と同義語(synonym)です。また、その和名は「マレー・フトモモ」です。
(N.3) ククイ(kukui):
ククイはハワイ語名で、その英名はキャンドル・ナッツ(candlenut)、 学名は "Aleurites moluccanus, (Synonyms)Aleurites moluccana", そして和名は「ククイノキ」です。
こちらもオヒアと同じカヌー・プラントで、その実に油分を多く含むことから、かつては灯火として活躍しました。また現在も 「ハワイ州の木」として人々に親しまれています。


(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 18. Kaliuwaa. Scene of the Demigod Kamapuaa's Escape from Olopana. From "The Hawaiian Spectator", p.193-199.
(*2) M.K. Pukui, S.H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.