324 カリウワア. 半神カマプアアが-- (11.今も面影が残る)

(前回からの続き)

あの溝はカマプアアの背中の跡だ

前にお話ししたあの滑らかな溝は、この戦いの際に、カマプアアにより作られたものだ、と言われています(*1)。
というのは彼は一度ならず、今回と同じような窮地に、追い込まれているからです。

地元の古老たちは今でもなお、それらは彼が背中を押し付けた跡だ、と信じています。

そして彼らは、ごく自然の事象を説明する際に、この最高に尤(もっと)もらしくて滑稽(こっけい)な、迷信を持ち出すのでした。

大きな岩、小川、そして木々も

このあたりにある多くの物が、この偉大な人物と結び付いています(N.1)。

例えばある大きな岩は、彼が縛り付けられた岩ですし、小川が広くなったある地点は、彼がよく水を飲んだ場所です。
そして多くの木々は、かつて彼が植えたものだ、と言われているのです。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) この偉大な人物(this remarkable personage):
「この偉大な人物」とはカマプアアを指しています。そして彼は豚だけで無く、色々な姿に変身(化身)することが出来たと言われています。ハワイでは、この変身後の姿をキノ ラウ(kino lau)と呼んでいます(*2)。
彼のキノ ラウの1つが 「ハワイ州の魚」 、すなわちハワイ州を代表する魚です。この魚のハワイ語名は大変長く、フムフム ヌクヌク ア プアア(humuhumu-nukunuku-a-pua'a)です。また和名はタスキモンガラ、学名はRhinecanthus rectangulusです。


また彼は植物に変身することもあります。それが、このお話しでも何度か登場したククイ(kukui)で、こちらは「ハワイ州の木」です。
彼はさらに、木性シダの一種であるアマウ(ʻamaʻu)にも変身します。アマウは学名が"Sadleria cyatheoides"でハワイの固有種です。カマプアアが住む山にはこのシダが茂る、と言われたそうです。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 18. Kaliuwaa. Scene of the Demigod Kamapuaa's Escape from Olopana. From "The Hawaiian Spectator", p.193-199.
(*2) Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.