349 旧約聖書の歴史に似た伝説 (15. ハワイのヨセフ)

(前回からの続き)

10人の兄弟たち

シェルドン ディブル牧師は、1843年にラハイナルナで、「サンドイッチ諸島の歴史」を出版しました(*1)(*2)(N.1)。
この著書の中で彼は、ヨセフ物語によく似た伝説、を紹介しています(N.2)。


「ワイケレヌイアイクは、10人兄弟の中の1人で、姉が1人いました。
彼らは皆、同じ1人の父親の子供たちで、父親の名はワイクと言いました。

ワイケレヌイアイクは父親にこの上なく可愛がられましたが、その反面、兄弟たちは彼を憎んでいました。
その憎しみは日に日に激しさを増し、遂に兄弟たちは彼を連れ出して、ホロナエオレの穴の中に、投げ込んでしまいました。

しかし一番上の兄は、彼のことを哀れに思いました。
そして、きちんと彼の世話をするように、ホロナエオレに言いました。

カモホアリイの国へ

やがて、ワイケレヌイアイクはそこから逃げ出して、ある国に逃亡したのでした。
その国を治めていた王の名前は、カモホアリイと言いました。

彼はそこで暗い場所、地下の大きな穴、の中に放り込まれました。
そこには、様々な罪を犯した人々が、たくさん監禁されていました。

この暗い場所に閉じ込められている間、彼は仲間達にこう言いました。
『色々な夢を見てご覧よ。そして、それがどんな夢だったか、私に話して欲しいんだ。』

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) シェルドン ディブル牧師 (The Rev. Sheldon Dibble):
ハイドさんが執筆したこのお話し「旧約聖書の歴史に似た伝説」は、その大半がフォルナンダーさんの著書「ポリネシア民族, 第1巻」の引用です。しかし、ここから先の「ヨセフ物語によく似た伝説」の部分は、ディンプル牧師の著書「サンドイッチ諸島の歴史」からの引用です。
ディブル牧師(1809-1845)は米国生まれの宣教師で、ヒロ(ハワイ島)、ラハイナルア(マウイ島)で布教・教育活動に従事し、35歳の若さでラハイナルアで亡くなりました。彼の生徒の中には、後に著名なハワイ人歴史学者として活躍した、マロ(D. Malo)、カマカウ(S. Kamakau)などもいました。


(N.2) ヨセフ物語(the history of Joseph):
ヨセフ物語は、旧約聖書 創世記37-50章 に掲載された長編物語で、文学的価値も極めて高いとされています。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 1. Legends Resemblng Old Testament History. By C. M. Hyde, p.15-30.
(*2) Sheldon Dibble (1843): History of the Sandwich Islands. p.28.