411 カレレアルアカ(32.プオワイナで果敢に戦う)

(前回からの続き)

また敵が攻めて来た

数日後、再びある使者がやって来て、こう知らせました(*1)。
「反逆者クアリイがクラオカフアの平原で戦いを仕掛けています。」

これを聞いて、カクヒヘワは直ちに兵を招集しました。
そしていつものように、足の不自由な元帥は、あらかじめ戦いの前日の夕方に出発しました。

兵士たちが出払った翌朝、カレレアルアカは妻たちに言いました。

「注ぎ口を下向きにしたままで汲(く)んだ、ヒョウタン容器の水が飲みたくてたまらないんだ。」
もしもそれが、上向きにして汲んだ水ならば、私はその美味しさを楽しめないだろう。」

ところでカレレアルアカには、このことが分かっていました。
「注ぎ口が下向きになっていたら、その容器に水を満たすことなんて出来ない。」

それにも拘(かかわ)らず、彼は戦場に向かう際の超自然的な飛行を、2人の若い女性に気付かせないために、このようなずるい手段をとったのでした。

プオワイナで果敢に戦う

そして、この若い女性たちの姿が見えなくなるや否や、彼はワイアルアへ向けて急ぎ、ウコアの潟(かた)で採れたウキとケアリアで採れたヒナヒナを、粗(あら)く寄り集めて作ったレイで盛装しました。

身繕(みづくろ)いした彼は、ナペハの丘を上っている、足の不自由な元帥の背後に舞い降りました。

そこで背中をポンとたたいて挨拶を交わすと、元帥から「なかなか良いペースだな!」と褒(ほ)められました。
そして 「何処から来たんだい?」と尋ねられたので、「ワイアルアからだよ。」と答えました。

鋭敏で観察力も鋭い足の不自由な男は、相手のレイがワイアルア産だと気付きましたが、それが誰なのかは分かりませんでした。
と言うのは、カレレアルアカのレイが茶色がかった灰色だったので、中年男のように見えたのでした。

彼は前の時と同じように、足の不自由な男を抱き上げると、プオワイナ(パンチ・ボウルの丘)の天辺(てっぺん)に降ろしました。
そして運んであげたお礼として、足の不自由な男からワイアルア全土をもらいました。


これが一段落すると、カレレアルアカは前と同じように勇猛果敢に戦いました。
どちらを向こうが、彼の目前からは敵兵たちが次々と消えて行きました。

唯一、彼が一瞬、思いとどまったのは、敵軍の大将を殺してフェザー・クロークとヘルメットを剥ぎ取り、さらには右耳と小指を切り落とした時でした。

カレレアルアカがプウロアの自宅に向かった時、その速さたるや、あたかも空を飛ぶ鳥のようでした。

この戦いで獲得した戦利品を、彼は前の時と同じように仕舞(しま)いました。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, IX. Kalelealuaka. Dr. N.B. Emerson, p.74-106.