024 神話 マウイが太陽を捕まえる(2.カパ布も作れない)


(前回からの続き)

マウイの母も、太陽のあまりの速さに、困り果てていました。
彼女はカパの布地を大量に作るために、もっと長い昼が欲しかったのです。

生活を支えるカパ布

その頃のハワイでは、衣類と言えばどれも皆 カパの布地で作るのが普通でした(*1)。

カパを作るには、まずある種の木の緻密な樹皮を、木槌(きづち)で叩いて砕きます。
そこで抽出された繊維をさらに叩いて、薄いシート状の布地にするのです。



この布地を使って、最高級のマットから衣服まで、いろいろな生活用品が作られました(*2)。

カパ布が乾く暇(ひま)もない

カパの布地を作るには、十分に乾燥させなければなりません。
しかしそれには、あまりにも昼が短か過ぎたのです。

マウイの母は、日が昇るとすぐにカパを1枚ずつ広げて、乾かしていきます。

ところが、山のように積まれたカパを、やっとの思いで広げ終わると、
無慈悲にも、太陽は既に青空を駆け抜けて、西に沈もうとするではありませんか。

これを見た彼女は、あたり一面に広げたカパを、今度は1枚ずつ集めていきます。
明日、太陽が昇るまでの間、家の中で保管しなければいけないからです。



(次回に続く)
[目次へ戻る]

(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; IV. Maui Snaring the Sun.
(*2) タパを使わない衣類は、織って作ったマットやティー・リーフ・スカートぐらいでした。
ティー・リーフ・スカートは、ティー・リーフと呼ばれるティーの木の葉で作った、スカート代わりの房飾りです。これはライー・スカートとも呼ばれ、今でもフラを踊る時に使われています。