030 神話 マウイが太陽を捕まえる(8.ウィリウィリの木とは?)

(前回からの続き)

[解説] ウィリウィリの木とは?

前回のお話の中で、母は息子のマウイに言いました。
「それではハレアカラの、大きなウィリウィリの木がある所に行きなさい。」

このウィリウィリは、古くからハワイの人々の日常生活を支えてきました。

その木の幹は軽くて浮きやすいので、カヌーのアウトリガーやサーフボードに使われました(*1)。
また、その花や種を使ってレイ(装飾品)が作られました。




ここでは、ウィリウィリの木について、少しご紹介しましょう。

(1) 名称と由来
ウィリウィリ(Wiliwili)はハワイ諸島の固有種で、学名はErythrina sandwicensisです。

"Erythrina"は デイゴ属、そして "sandwicensis"はハワイ諸島の種を示します。
後者は、 「ハワイ諸島」の旧名称 "Sandwich Islands"に由来します。

(2) 恐ろしく強靭(じん)な木
ある人がトラックをバックさせていた時、ウィリウィリの木に激突してしまいました。
そのため、ウィリウィリの幹は大きくえぐり取られ、ひどく損傷しました。

しかし暫くすると、痛ましい傷跡を残しながらも、その木は完全に復活したそうです。

さて、南国・沖縄では、ウィリウィリと同じデイゴ属の種「デイゴ」が、沖縄県の花に指定されました。
赤い花をつけるデイゴの木は、「屋敷壊さー(やしきこーさー)」とも呼ばれています。

余りにも強い根の力が、「屋敷さえも傾ける」からだそうです。

このように、強靭な幹と根を持つウィリウィリの木は、太陽を縛り付けて動けなくする(後述)には、最適だったのでしょう。



(3) 標高0m~約600mに生育
ウィリウィリは、標高0~約600mに生育すると言われています。
一方、マウイのお婆さんが住むハレアカラ山のクレーターは、これよりはるかに高い所にあります。

一般的には、ウィリウィリがクレーターの近くで生育するのは難しそうです。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Univ. of Hawaii: Native Plants of Hawai'i. ; (Home Page)/Plant/Erythrina sandwicensis.