032 神話 マウイが太陽を捕まえる(10.お婆さんの教え)

(前回からの続き)

お婆さんがマウイを嗅ぎ分ける

お婆さんの目は、ほとんど見えません(*1)。
そのため、近くにいるマウイの姿も、見ることが出来ませんでした。

しかしお婆さんには、不自由な目を補う鋭い鼻がありました。
そして、周囲の匂いをクンクンと嗅ぎ、1人の男がいることを突き止めたのです。


太陽と戦う決意を語る

お婆さんは、その男に向かって尋ねました。
「お前は誰だ? 一体、誰の所から来たのだ?」

マウイはお婆さんの目をじっと見つめ、礼儀正しく答えました。
「私はマウイです。ヒナのもとから来ました。ヒナは私の母です。」

すると彼女は、マウイに問いかけました。
「それで、ここに何しに来たのだ?」

マウイは、心を込めて一部始終をお婆さんに話しました。

「私は太陽を殺すために、ここに来たのです。
太陽があまりにも速く動くので、ヒナが一生懸命打って作ったタパが、少しも乾かないのです。」

お婆さんの教え

これを聞いたお婆さんは、マウイに魔法の斧とロープを1つずつ与えました。

それから、マウイの顔をのぞき込むようにして、こう言いました。
 
「この大きなウィリウィリの木の脇に、お前の隠れ家(かくれが)を作りなさい。

そして、あの山の上に太陽の最初の足が昇ってきたら、最初のロープで捕(つか)まえなさい。
2番目、3番目の足も同じ。 ロープを使い果たすまで、太陽の足を次々と捕まえるのです。

太陽を捕まえたロープの反対側の端は、このウィリウィリの木に縛り付けなさい。
そうして、太陽が動けないようにするのです。

その後に、お前に渡した魔法の石斧を取り出し、太陽の胴体を思い切り叩(たた)きのめしなさい。」

(次回に続く)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; IV. Maui Snaring the Sun.