041 神話 釣り人マウイ(5.最強の繊維オロナ)

(前回からの続き)

釣り糸はオロナ製


つる植物は、他の植物に巻き付きながら茎を伸ばしていきます。

その茎は柔らかく引っ張りに強いので、紐(ひも)として使ったり、その繊維から撚(よ)り糸を作ったりしました。
なかでも、オロナ(olona)の繊維を使えば、ハワイの島々の中でも、一番長くて強い糸を作れました。


そして、このオロナの繊維を使った釣り糸は、ハワイの漁師たちの間に広く知られていました。
この釣り糸を使えば、深海から超大物を釣り上げることも出来るからです。


釣り針にもオロナは必須

マウイが魔法の釣り針を作った時も、このオロナの糸を使って、軸の部分と先端部分を結び付けました。

しかしこの構造の釣り針は、食いついた魚が暴れると、バラバラに分解する危険性があります。
それを防ぐには、一瞬たりとも釣り糸を緩ませてはいけません。

食いついた魚をカヌーに取り込むには、釣り糸を強く引っ張り続けることが必須なのです。

魔法の釣り針の登場はまだ先針

マウイは長い間、魔法の釣り針を使おうとしませんでした。

彼はそれが、普通に魚を釣るいつもの漁では無力なことを、理解していたようでした。

そして、その魔法の釣り針を使おうとするのは、彼が生来備え持つわずかな魔法と機知を、兄弟たちに使い果たした後のことでした。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; Ⅱ.Maui the Fisherman.