047 神話 釣り人マウイ(11. 仲間外れのマウイ)

(前回からの続き)

創世神話にあるように、マウイは母に言われて父のもとに行きました(*1)。
そこで魔法の釣り針マナイアカラニを手に入れると、マウイは兄弟たちと漁に出ようとしました。

ある日、兄弟たちが沖合に向けて、カヌーを漕ぎ出そうとした時のことです。
彼らのカヌーの端に、マウイがいきなりピョンと飛び乗って来たのです。

ことわりもなく乗り込んだマウイに、彼らは怒りのあまり大声で叫びました。
「この舟は小さ過ぎて自分たちだけでいっぱいだ! もうこれ以上乗れないぞ。」

そしてとうとう彼らは、マウイを舟から放り出してしまいました。
海に投げ出されたマウイは、仕方なく泳いで岸に戻ったのでした。

一方、その後、沖合の漁から帰って来た兄弟たちの獲物は、たった一匹のサメだけでした。


(次回に続く)
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[解説] サメはハワイの人たちの神様
ハワイの人たちは、先祖の化身である動植物などを、家族神または守護神としてきました(*2)。
そしてその家族神を、自分たち家族のアウマクア(Aumakua)と呼んでいます。

その中で、漁師の家族の間で最もポピュラーなのが、マノ(manō)と呼ばれるサメの家族神です。



一方、火山の女神ペレの兄カモホアリ(Kamohoali'i)はサメの神です。
彼ら兄弟姉妹はカモホアリに先導され、故郷タヒチからはるばるハワイにやって来たのです。

そして今でも、カモホアリはサメの姿となって、マウイ島の深海を泳ぎ回っていると言われます。


(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; Ⅱ.Maui the Fisherman.
(*2) J.S.Emerson(1892): The Lesser Hawaiian Gods, Hawaiian Historical Society, April 7, 1892.