048 神話 釣り人マウイ(12. ウルアはどこだ?)

(前回からの続き)

マウイがいないと釣れない?

マウイを置き去りにした兄弟たちが釣ったのは、たった一匹のサメだけでした。

それを見たマウイは言いました(*1)。

「もしも自分が一緒だったら、もっとましな魚が釣れていたのに!
--ウルア(Ulua)、ひょっとすると魚の王者ピモエ(Pimoe)だって釣れたかも知れない[解説 1]。」


マウイと兄弟たちが出港

そして遂に兄弟たちは、マウイを連れて漁に出かけることにしました。

マウイと兄弟たちは、キパフラ港を出てはるか先、マウイ島の東側ハナ(Hana)の沖合いまで行きました。
その海岸近くには、カ・イウィ・オ・ペレ(Ka Iwi o Pele)、すなわち「ペレの骨」と呼ばれる奇怪な溶岩塊があります[解説 2]。



彼らはその沖合で、ウルアを釣り上げようと頑張りましが、結局、釣れたのはサメだけでした。

そこで兄弟たちは、マウイを笑いものにして言いました。
「ウルアはどこだ、そして、ピモエはどこにいるんだ?」

(次回に続く)
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[解説 1] ウルアは大変高貴な魚
古代ハワイでは、ウルアは大変高貴な魚とされていました(*2)。

そして、この魚を釣ることを許されるのは、首長だけだったとも言われます。
また、神に生贄を捧げる必要があるのに、その生贄となる人がいない時は、ウルアが生贄とされました。

ハワイには、「ウルアは戦士のように強い」 と言う諺(ことわざ)もあるそうです。

[解説 2] カ・イウィ・オ・ペレは「ペレの骨」
伝説によると、火の女神ペレは、この地で海の女神である姉と戦って敗れました(*3)。
亡きペレの骨を積み上げた小山がカ・イウィ・オ・ペレで、実際には溶岩の塊です。

その溶岩塊から数百メートル東の海岸には、アウラ(Alau)島があります。
この小さな島はその名が示すように、「多くの岩」 から出来ています。

(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; Ⅱ.Maui the Fisherman.
(*2) Scot Radway(2015): Ulua Tagging Reveals Fish Behavior, Breeding Pilgrimages, Fish Life, Part 1, Hawaii Fisheries Local Action Strategy, Division of Aquatic Resources.
(*3) Mauimuseum: ka-iwi-o-pele.