049 神話 釣り人マウイ(13. 魔法の釣り針と聖鳥)

(前回からの続き)
前回のお話し: 大口をたたくだけで全く釣れないマウイを見て、兄弟たちは「ウルア、いや、海の王者ピモエはどこにいるんだ?」と、マウイをからかいました。

魔法の釣り針と聖鳥

これを聞いたマウイは、遂に魔法の釣り針を取り出し、海に投げ込みました(*1)。
餌は、マウイの母ヒナの神聖な鳥アラエ(Alae)です[解説]。

マウイはその釣り針に向かって、呪文(じゅもん)を唱え始めました。
「この釣り針に神の力を授けた時、大きなウルアが釣れるであろう。」

すると、何ということでしょう? 深い海の底が大きく動き始めたのです。
そして巨大な波が次々と押し寄せ、マウイたちのカヌーを押し流そうとします。

その魚は、釣り糸を極限まで引き込みながら、カヌーをまる2日間引っ張り続けました。

(次回に続く)
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[解説] アラエは神に仕える守護神
アラエは、日本語で言うバン(鷭)という鳥です。



ハワイでは、神の火を守る守護神として崇められていました。
少なくとも、マウイが火のおこし方を盗み取るまでは、このアラエが神のために、火を守っていたのです。

その反面、この鳥はハワイの人々の食糧にされることもあったようです。

さらに日本でも江戸時代には、「三鳥二魚」と呼ばれる5大珍味の1つとされました。
すなわち、鳥とは「ツル・ヒバリ・バン(鷭)」、そして魚とは「タイ・アンコウ」 のことでした。

(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; Ⅱ.Maui the Fisherman.