050 神話 釣り人マウイ(14. ハワイ諸島を釣る)

(前回からの続き)

ハワイ諸島を釣る

しかし、さすがにその魚にも疲れが出て、釣り糸に緩みが見えてきます(*1)。
すると、マウイはすかさず、「もっと強く引いて!」 と大声で兄弟たちに叫びます。

やがて、釣り上げられた海底が、大地となって海面に姿を現わしました。

マウイは兄弟たち向かって、再び叫びます。
「絶対に後ろを見るな! さもないと、魚が逃げてしまうぞ!」

しかし兄弟たちは、とてつもなく大きいに違いない魚を、一目見たくてたまりません。
そして、とうとう兄弟の1人が我慢しきれず、後ろを見てしまいました。

と、その瞬間。 張り詰めていた釣り糸が緩み、「パチン」と鋭い音を立てました。
大地を釣り上げた釣り糸が切れ、バラバラになってしまったのです。

そして、その大地も彼らの背後の海面に散らばり、幾つもの島々となったのでした[解説] 。



(次回に続く)
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[解説] ピモエはハワイ主要8島
ビショップ博物館のT.カミングさんによると、ピモエ(Pimoe)とはマウイの釣り針に掛かった魚のことです(*2)。
高貴な魚と言われたウルア(Ulua)の超大型版、とも言える魚だそうです。

しかし、マウイが釣り上げようとした時、ピモエはバラバラになってしまいました。
そして、魚としてのピモエの肉片は、ハワイの主要8島になったのだそうです。

(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; Ⅱ.Maui the Fisherman.
(*2) Scot Radway(2015): Ulua Tagging Reveals Fish Behavior, Breeding Pilgrimages, Fish Life, Part 1, Hawaii Fisheries Local Action Strategy, Division of Aquatic Resources.