051 神話 釣り人マウイ(15. 他バージョン(1/2))

(前回からの続き)

前回までで、「神話 釣り人マウイ」のお話しは、一通リ終わりました。
しかし、他の口承神話と同じように、このお話にも若干異なるバージョンがあります。
以下では、この神話のクライマックスの部分 「13.魔法の釣り針と聖鳥、14.ハワイ諸島を釣る」 を対象に、異なるバージョンを一つご紹介しましょう。


家に戻りたかった兄弟たち



マウイは兄弟たちと一緒に、カウイキ(Kauiki)の家から、漁(りょう)に出かけました(*1)。
しばらくすると、兄弟たちはいい魚が釣れたので、家に帰りたくなりました。

ところがマウイだけは違いました。
「もっと沖に出よう!」 と言い張ったのです。

マウイのトリックで沖に出る

兄弟たちは、しばらくマウイにつき合っていましたが、やがて疲れてきました。
そして彼らが、「家に帰る」と決めた時のことです。

マウイが魔法の力で海を思いっきり広くして、岸辺をはるか彼方に遠ざけたのです。
そして遂に、マウイたちが乗るカヌーからは、陸地が全く見えなくなってしまいました。

こうしてマウイは、嫌がる兄弟たちを道ずれにして、強引に沖に出てしまったのです。

自分の計画を実現させるためなら、他人の気持ちなどお構いなし、と言うのがマウイの流儀です。
相手が兄弟や友達であろうが、たとえ神様であっても、そんなことはお構いなしです。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; Ⅱ.Maui the Fisherman.