053 神話 マウイが火を発見(1. 嵐が静まり漁に出る)

(新しいお話しの始め)

嵐の後の海に漕ぎ出す

ここはマウイ(Maui)島の南東部、ハレアカラ(Haleakala)火山の麓で海岸沿いにある、カウポ(Kaupo)という所です(*1)。



ある時、嵐で海が荒れ続けたため、マウイ(Maui)たちは長い間、漁に出れませんでした。
そして、マウイの母ヒナ(Hina)は、魚が手に入る日を待ち焦(こ)がれていました。

ある朝早く目を覚ましたマウイは、嵐の大波が静まっていることに気づきました。
「よし、これなら漁に出れるぞ!」

彼は、まだ寝ていた兄弟たちを呼び起こし、カヌーがある浜に急ぎました。
そして、夜明け前の暗がりの中を、沖に向かって漕ぎ出したのです。

はるか彼方に火が見えた!

沖合の漁場に着いた彼らは、早速、漁の準備を始めました。

ところが、マウイがふと顔を上げ、はるか彼方の陸地に目をやった時のことです。
何と、山の中腹に赤い炎が、見えるではありませんか!

「あそこを見ろ! 火だ、火が燃えているぞ。」と彼は叫びました。
「一体、あの火は誰のものだろう?」

兄弟たちも驚きを隠せず、マウイに同調して言いました。
「全くだ。火を持っているなんて、一体誰だろう?」

興奮気味の誰かが、続けて言いました。
「急いで岸に戻ろう。あの火を使って食べ物を料理しよう。」

まずは魚を捕まえる

兄弟たちはあれこれ議論した末、岸に戻る前に、まず魚を捕まえることにしました。

日が昇り、暑い太陽が差しこむと、魚たちは暗い深海の奥深くに追いやられてしまいます。
しかし、日が昇る前の早朝の海には、魚たちが溢(あふ)れているのです。

こうして彼らは、魚たちが溢れる海で漁を楽しみ、カヌーの底に山のように獲物を蓄えたのでした。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; V. Maui Finding Fire.