054 神話 マウイが火を発見(2. アラエの火を狙え!)

(前回からの続き)

火の無い生活

長い間、彼らは「火」の無い生活をしてきました。

彼らの頭上にそびえる、偉大なるハレアカラ山は、もう噴火することはありません。
- 彼らが必死に守ってきた火種も絶えてしまったのです。


彼らが食べていたのは、果物や生の木の根、それから、岩場で採った貝などでした。
そして時には、沖合いで獲れた大型の魚を生で食べました。

しかし、沖に出てはるか彼方に火を見た時から、彼らの気持ちは大きく変わりました。
山腹に見えた燃え上がる火、さらには、調理した食べ物が欲しくなったのです。

時すでに遅し!

マウイは、岸に着くが早いかカヌーから飛び降り、火をめざして山腹を駆け上りました。

しかし彼が着いた時、そこには、雲のような煙の柱が立上がっていました。
ちょうどある鳥の家族が、火をかき消したところだったのです。

そして、仕事を終えた鳥たちは、どこかに飛び去ってしまいました。

アラエの火を待ち続ける

その鳥はアラエ(Alae) 、またはマッドヘン(mudhen)と呼ばれ、尾が曲がっていました(*2)。

それ以来、マウイと兄弟たちは、アラエたちが火を起こすのを、ひたすら待ち続けました。
しかし、アラエたちには、その気配さえもありません。

そこでマウイたちは、再び沖へ漁に出ました。
そして彼らが陸地の方向を見ると、やはり前と同じように、炎と煙が見えたのでした。

このようなことを、マウイたちは幾度となく繰り返しました。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; V. Maui Finding Fire.
(*2) アラエの和名は 「バン(鷭)」です。額からくちばしの根もとの赤色が「火」を連想させます。
神話・釣り人マウイでは、ハワイ諸島を釣り上げる時に、魔法の釣り針の餌になった鳥です。詳しくは、本ブログ 「049 神話 釣り人マウイ(13. 魔法の釣り針と聖鳥)」などを参照下さい。