055 神話 マウイが火を発見(3. マウイの作戦は連敗)

(前回からの続き)

マウイを残して舟を出す

マウイは兄弟たちに言いました(*1)。

「兄さんたちは舟に乗って漁に出て下さい。
-- 僕はここに残って、あの鳥アラエ(Alae)たちを監視するから[解説]。」

しかし、こと慎重さにおいては、アラエたちはマウイより一枚上手でした。
彼女らは、マウイたちの何人が舟に乗ったかを、数えていたのです。

そして、こう話し合っていました。

「3人は舟に乗ったけど、残りの1人はどこにいるか分からない。
ひょっとすると、こっそり隠れて、私たちを見張っているかも知れない。
だから、今日は火を起こすのをやめましょう。」

作戦は失敗の連続だった

こんな感じで、マウイの作戦は失敗の連続でした。

ある時は、1人か2人が陸に残り、他の兄弟たちが舟を出しました。
またある時は、みんな揃(そろ)って陸で待ちましたが、いずれも火は起こりません。

ところが、夜明けにみんなで舟を出すと、いつも決まって陸に火が見えるのでした。

(次回に続く)
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[解説] 警戒心が強い水鳥アラエ(Alae)



水鳥のアラエ(アラエ・ウラ('Alae'ula)とも呼ぶ)は、ハワイの固有亜種です(*2)。
極めて謎深い水鳥と言われ、淡水の沼地などに生息します。

大変警戒心が強く、湿地のこんもり茂った草木の中で、一日の大半を過ごします。
(-- 最近は、「警戒心が無さ過ぎる!」 と嘆く声も聞かれますが --)

1800年代まで、アラエはハワイの主な島々で、ごく普通に見られました。
その後は激減しましたが、1900年代後半に生息環境が改善され、絶滅の危機を脱しつつあります。
現在はオアフ島とカウアイ島で見ることが出来ます。

(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; V. Maui Finding Fire.
(*2) U.S. Fish & Wildlife Service: Endangered Species in the Pacific Islands/ Hawaiian Common Moorhen, Last updated:September 20, 2012.