056 神話 マウイが火を発見(4. 命だけは助けてやろう)

(前回からの続き)

マウイの人形作戦が成功

マウイは最後の手段として、カパ布を何枚も重ねて丸め、大きな人形を作りました。
その人形をカヌーの端に乗せると、あたかも人が乗っているようでした。


翌朝、マウイは水鳥アラエが良く来る湿地近くに身を隠しました。
一方、兄弟たちは人形と一緒に舟に乗り、未だ薄暗い海に出ました。

沖に向かう舟を見たアラエたちは、舟に乗っている人を数えて、言いました。
「4人全員が乗っている。 よし、今日は火を焚(た)いても大丈夫だ。」

アラエたちは、薪(たきぎ)を集めては積み重ねていきます。
やがて年長のアラエが、薪の中から火を起こすための枝木を選びはじめました。

アラエを捕虜にする

マウイは、その様子を物陰からじっと覗(のぞ)いていましたが、もうこれ以上我慢できません。
あの賢い鳥アラエが、これまでずうーっと、火の秘密を隠してきたのです。

マウイは、こみ上げる怒りに押し流され、熱(いき)り立ちました。
そして、矢のように素早くアラエに襲いかかり、捕まえてしまいました。

マウイは衝動的にアラエをなじり、殺そうとさえしました。
「火の秘密を手に入れる」と言う一大目的まで、忘れかけていたのです。

命だけは助けてやろう

マウイに捕まったアラエは、大声で叫びました。

「もしも私を殺せば、私が知る火の秘密も失われます。
それでは、あなたも火が手に入らなくなってしまう。」

そこで、マウイはアラエに約束しました。
「火を手に入れる方法を教えれば、命だけは助けてやろう。」

(次回に続く)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; V. Maui Finding Fire.