058 神話 マウイが火を発見(6.アラエの額はなぜ赤い?)

(前回からの続き)

乾いた木を探し続ける

堪忍袋の緒が切れたマウイは、だましたアラエの頭を掴(つか)むと、彼女をねじり殺しにかかりました。
するとアラエは悲鳴を上げながら、ある乾いた木の名前を告げました。

マウイは、アラエが言う乾いた木を見つけると、今度はそれを擦(こす)りはじめました。
しかし、擦っても擦っても、その木は少し暖かくなっただけでした。

すると怒り狂ったマウイは、再びアラエをねじり殺しにかかりました。
このようにして、マウイとアラエの戦いは、幾度も幾度も繰り返されました。

マウイはその中で、一つの木から次の木へと、次々に試して行きました。
そして、アラエがほとんど死にかけた時、遂にマウイは火を発見したのでした。


もう一つ擦らねばならぬ!

その炎が燃え上がった時、マウイは勝ち誇ったように言いました。
「もう一つ、擦らなければならないものがあるゾ!」

マウイは火の出る木を手に持って、アラエの前に仁王立ちになりました。

そして、しっかりと握りしめた木で、アラエの額(ひたい)を強く擦りはじめたのです。
マウイの手の動きが止んだのは、額の羽根が落ちて赤い生肉が現れた時でした。

それ以来ずーっと、ハワイのアラエとその子孫たちは、額がはげて赤くなっています(*2)。



そしてこのマウイの努力のお陰で、ハワイの人たちは火を起こす秘密を手に入れたのでした。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; V. Maui Finding Fire.
(*2) ハワイでは、額が赤いアラエを 「アラエ・ウラ('alae 'ula)」と呼びます."'ula"が日本語の「赤」の意味です。参考までに、額が白いアラエは 「アラエ・ケオケオ('alae ke'oke'o)」で、"ke'oke'o"が「白」の意味です。