060 神話 マウイが火を発見(8. もう一つの伝説(2))

(前回からの続き)

火の起こし方の秘密を盗もう!

そこでマウイは、火の起こし方の秘密を盗もうと考えました(*1)。

見れば、水鳥のアラエたちは既に火を起こした後で、バナナはほとんど焼き上がっていました。

と、その時、兄のアラエが弟に言いました。
「急げ! ほら、あのすばしっこい、ヒナの息子マウイがやって来るぞ。」

アラエたちは、素早く火を消しバナナを掴(つか)むと、姿を消してしまいました。


その後、マウイは母ヒナに言いました。
「どこまでもアラエたちを追いかけて、火の起こし方の秘密を盗み取りたいのです。」

マウイの母は、息子が強健で素早いことを良く知っていました。
そこで、息子の考えを受け入れ、励ましたのでした。

アラエを追ってオアフ島へ

マウイは逃げ回るアラエたちを、どこまでも追いかけました。
一方、アラエたちは逃げながら、火を起こせる新しい場所を探し続けていました。

そしてとうとう、彼らはオアフ(Oahu)島のワイアナエ(Waianae)までやって来ました(*2)。


マウイはそこで、大きな大きな焚火(たきび)と、それを囲む鳥の大群を見たのです。
彼らは大声でおしゃべりしながら、バナナを素早く焼き上げようとしていました。

良く聴くと、鳥たちは呪文(じゅもん)を唱えています。

『素早く焼こう。
素早く焼こう。
ヒナのすばしっこい子(マウイ)が来るぞ。』

(次回に続く)
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(注記)
(*1) W.D.Westervelt(1910): Legends of Ma-ui, A Demi God of Polynesia, and of His Mother Hina; V. Maui Finding Fire.
(*2) 現在のハワイでアラエが生息するのは、オアフ島とカウアイ島だけです。